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Channel: 崔吉城との対話
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朝倉敏夫『コリアン社会の変貌と越境』(臨川書店)

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 平凡な日常からの断絶(一か月間入院)によって私は「年末」という季節感が受け入れ難い。紅葉や木枯らしなどの自然の変化を皮膚で感じて季節を感ずることなく、浦島太郎のように季節が勝手に先走っているように感ずる。季節とは自然のリズムと人間のリズムが並行している。昨日ソウルの姉からキンジャンキムチ、広島の教え子からお歳暮のメロンが届いて年末を感じさせ、違和感のない日常をとりもどせたような気分である。
 民族学博物館の朝倉敏夫氏から最近著『コリアン社会の変貌と越境』(臨川書店)が届いた。韓国研究30余年、来年3月定年を思い、韓国だけではなく海外のコリアン社会を含めて調査したことが書かれている。私が日本に移り住んだ後の韓国情報の話であるが、反日感情、島での生活など韓国の伝統社会の変化はそれほど激しく感じられない懐かしさがある。しかし世界に散らばって住んでいる韓国人コリアンのグローバル化「越境」からは激変を感ずる。
 私は朝鮮戦争による離散家族の悲劇、冷戦時代のサハリンのコリアンなどで家族の離散を悲劇などと同情したり調査したりしたが、今の越境時代には「離散」は必ずしも悲劇だけではない。普遍的に起こる現象でもある。今われわれの現代家族の多くは単身赴任など離散しているのが常である。大家族から核家族化、離散、越境の現象が著しくなっている。

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