金石出一〇周忌の公演

　一昨夜ソウルからシャーマニズム博物館長の梁氏から電話があった。故金石出氏10周期記念公演に関するものであった。金石出氏は先日東京で映画「冥界婚」の儀礼の主役の方である。金氏の１０忌行事には私も参加すべきであると、前巫俗学会の会長でもある梁氏からの電話では感動した。昨夜7時から3時間ソウル南山国楽堂で行われた。梁氏が進行役であり、私に電話メッセージを観衆に伝えたいということでの電話であった。ムーダンたちには「会いたい」という言葉を言った。1960年代末私が金氏に会い本格的に調査する時は彼らの存在は全く知られていなかった。
　私は文化人類学を専攻する上で良い資料、民俗文化と思い集中調査を始めた。しかしムーダンは被差別集団であり身分の露出にはタブーがあった。儀礼と、内婚や世襲について地方の新聞に報道した時「賤民」ということばを以て金氏と討論した。金氏は両班出身を主張した。が、私は被差別集団であることをあえて明らかにすべきではないかと言った。その討論には友人の李相日氏が同席して助言してくれたことに感謝である。金石出氏は「賤民の三代続きムーダン」を宣言した。それがメディアでも大きく報道されるようになった。そして人間文化財と称され、「先生」とされて亡くなられた。最下層から上層へ昇格された。しかし彼と私は変わりなく調査者とインフォマントの関係、そして親族のようになっている。戦前の彼の儀礼のドキュメンタリー「冥界婚」を上映し、つづいて一〇周忌の公演が行われることをもって御冥福を祈る。