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Channel: 崔吉城との対話
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松原孝俊氏講演

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ワンアジア財団支援講座10回目 松原孝俊「東アジアの国際交易ネットワーク」

場:東亜大学13号館202 時:2016年12月3日午後2時半から4時まで

私の松原孝俊退職記念エッセイに寄稿した拙稿

啓明大学校時代

人生には多くの人間関係があります。偶然に何度も会う人もいれば一度限りの出会いでも忘れられない人もいます。韓国語で오다가다 만난 사람(偶然に会った人)とは無縁、信用できない否定的なイメージがあります。しかし多くの人の縁はその偶然性によって始まるがそれは偶然ではないはずです。科学的、論理的に考えると確実な結果であると言えます。つまり偶然は必然なのです。それが松原孝俊教授との出会いでした。私は30代半ば、彼は27歳でした。

私は日本での留学生活を終え、馬山の慶南大学校に勤務。そして縁があって大邱の啓明大学校の日本学科へ移った時、学期初に二人の日本人に会いました。松原氏と門脇誠一(後に北海道東海大学教授)氏です。二人は日語日本文学科に所属しており、日本語教育の教員でした。私は日本学科の所属ではありましたが、私たちはほぼ毎日のように会いました。当時は毎日のように会い日本語で長く話をし、親しく付き合ったのです。私は日本留学をしても日本語が不十分であり、日本語の練習が伴ったものでした。丁度彼は学生たちに日本語を教える教員であったが私の日本語の先生、同僚、友人ともなっていたのです。

一回だけしか会わなかった人、今ではお互いに忘れてしまった人もいます。また、彼らが私を記憶していても私が憶えていない人もいると思われるし、またその逆もあろうと思います。恩恵を受けたとか、嫌な思い出のある人のことは記憶に残っているでしょう。当時の人間関係は一回性の関係、恒久性の関係と二分されます。

当時の日記を見るとそこでいろいろな人との出会いの縁が生まれ、たくさんの方々との交流が始まりました。私の日記には多くの方々の名前が散在しています。特に松原氏の名前が多くでてきます。松原氏は1979年3月~1981年3月まで2年間私の日記に点轍するように記されています。その間はほんとに親しくおつきあいしたものです。

1979年3月25日の日曜日に日本から友人の末成道男氏がわが家を訪ねて来られた時、松原氏と門脇氏も同席するようにしました。また数日後の30日に松原氏のご家族が私の研究室を訪問してくださいました。末成氏が帰国する4月4日松原氏が荷作り、駅まで一緒に見送りをしたことも書いてあります。

啓明大学校で6月22日(金)2時に松原氏の発表が終って皆で撮った記念写真は私の家内がシャッターを押しました。私は彼を韓国の日本学会、民俗学会、文化人類学会などに紹介、推薦しました。私の恩師の任晳宰、李杜鉉の両先生をはじめ多くの方を紹介し、親しくなりました。私と一緒にそれらの学会に参加することも多かったのです。校内の教授会の旅行の時の思い出は数々あり、親しく付き合って1981年2月26日、大邱で零下13度の寒さの中で山林という食堂で彼の送別会を夜遅くまで行いました。その後も、その縁は今も延々と続いております。

彼は韓国語も習いはじめ、慶尚道放言さえ駆使するようになり朝鮮半島の民俗文化研究-主に口頭伝承・宗教儀礼-、そして朝鮮通信使や対馬・釜山和館などでの日韓文化交流史まで広げて韓国研究者として定評を得るようになりました。そして韓国研究センター所長になりその力を速やかに発揮するようになりました。私がその九州大学韓国研究センターで集中講義をしたのは長い友情の証でもありました。その他論文審査にも参加させていただきました。

彼は東亜大学大学院博士審査にも加わってくださいました。さらに東アジア文化研究所の開所式で祝辞を述べてくださり、博士論文審査などに来てくださるなど交流は太いパイプでつながっています。

常に情熱的で若さいっぱいの彼が定年とは信じられない気持ちです。20代の彼のイメージがあまりにも強く残っているからでしょうか。あるいはそれは私自身が年を感じても人の加齢には鈍感なのかもしれません。彼は昔話の研究から国際化へと広げ、深まり、韓国研究センターの研究所の設立と育成に大きい業績を残して定年になりますが、続けてお互いに協力関係は続くと思います。

彼とは偶然のように会いましたが必然の出会いだったのです。その縁は40年近く脈々とつながり磨かれてきたのです。多くの縁が一回きりになり、絶縁となった人も多い中われわれの友情は長く続いてきたのです。これは記念すべきことです。ここで定年を祝い、業績を賛美し、筆を置きます。

2016年1月17日


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