冬には散歩はほとんどしない。風邪などに気を付けているからである。ただ家内のショッピングに同行して店内を歩くのが唯一の散歩である。しかしただの散歩ではない。商品、陳列方法などを観察する好機でもある。ほぼ店内を把握しているが全く見ていないコナーがある。それは酒類の所である。酒やビールなどの酒類コーナーには全く関心がないからである。飲酒文化にも関心がないので人生の楽しみの大部分を損しているかも知れない。父がそうであるように私にはその遺伝子がないのかもしれない。
『満洲モダン』の著者であり、韓国東亜大学校の総長の韓錫正氏からビールに関する論文が届いた。季刊誌『社会と歴史』に掲載された論文「植民、抵抗、そして国際化(식민, 저항 그리고 국제화)」を読書会で紹介した。ビールは飲料水か酒類かは一様ではない。それはそれぞれの地域、国家へ拡散していく。西欧のビールは都市化 、資本主義化, 鉄道の発達につれて普及する。東アジアでは「植民者の酒」として普及した。日本は第1次大戦後中国青島ビールを引き受け「大日本」として中国へ侵透する。そして広く植民地に原料農場を作りながら拡張していく。もちろん植民地朝鮮にも「朝鮮麦酒」「昭和麒麟」が戦後の韓国のビールとして伝統を継いている。植民地を通して飲料・香辛料など嗜好、コーヒ、胡椒などに関する研究は多い。本論文は世界的に広く文献を引用し、視野が広く、非常に刺激的な論文である。私の科研グループの中の八尾氏は先日台湾のパインアップル産業について素晴らしい論文を発表し、私は世界的な視野が欲しいとコメントをしたことを思い出す。このような研究を総合的にまとめたい気持ちになった。
先日二度目に会った韓氏に研究を続けるように言うと、彼は総長である今は時間がないと言われた。私は時間がある「暇な人」より「忙しい人」に質の良い仕事を期待する。仕事は能力ある人に集まる。「怠け者」と「勤勉な人」の差をつけるような言葉になって申し訳ないが、半分は真実性のある言葉であろう。
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「植民者の酒」
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