他の地域では新聞、雑誌などに書評や記事が予定されている中、地方のメディアの反応が全くないのは本欄で指摘したとおりであるが、昨日ある新聞から長くインタービューを受けた。以前慰安婦問題でインタービューされても記事にならなかったのでそれについての一言から始まった。記者は東京在住が長かった人で、私と8年ぶりに会うというべテラン、直接コンピューターに打ち込み、写真を撮りながら話が進行された。彼は拙著を細かく読んでからの質問だったので私は調子に乗り喉が枯れるほど大きい声で語った。特に読者に拙著を読んでいただくように説明し、また私が人の本をどう読むかという読書術のような話が多かった。それは「客観的?」とは何か、という問いに応じてであった。この本が日韓関係に多少影響するならどこにどのようにであろうか。それは特に映像メディアに翻弄されるのではなく、問題を深く、広く考えるようにということであろう。
インタービュー
出版記念講演会
昨日は下関にも雪がちらついた。風雪の冬である。山陰中央新報などには書評掲載が予定されている中、拙著『慰安婦の真実』の出版記念講演会のために打ち合わせ会が行われた。準備委員の代表は藤中和岳氏、2月24日午後3時からシーモールパレスで拙著の提供、著者の弁、出版経緯、感想などが語られる予定。多くの書評、新刊紹介、感想文などを紹介する予定。できれば読者からのコメントもお願いしたい。
留学
師匠や先生から何を学んだのか。その多くは見習い、真似であろう。それを含めて私の先生に感謝している。教育制度が確立する前までは文化はそのようにして発展してきたはずである。古くは韓国や日本が中国文化を、近代以来は韓国や中国が日本の近代化文明を多く見習ってきたのである。まねるこも大きい教育方法の一つである。
近代以降、海外留学生が帰国し指導的活躍したことはいうまでもない。しかし最近韓国のドラマなどでは問題児などを留学させるのを見て異様な感がする。私は多くのアジアからの留学生に講義をしているが多くは優秀である。彼らは入試地獄といわれる競争社会から解放されてのびのび楽しく生きている。外国語や国際感覚によって日本で就職する人が多くなっている。昨日韓国昌原地域の中高生たち、校長先生を含む先生方、父兄の30人弱が来校した。学長や教職員と一緒に歓迎した。
同姓同本
呉信媛先生引率、韓国の女子高校生6人がわが家を訪ねて来た。門司から船で渡ってきたので我が家での海岸景色鑑賞は省略。愛犬ミミを囲んでの談笑だった。自己紹介で名前を漢字で書くのは難しかったようである。朴世恩、崔由京、金旼祉、河垂濱、金秀辰、徐由味の6人の中に金の姓が二人、韓国の苗字の中の最多姓であることをさす。中に崔の姓が一人いた。彼女から本貫を聞かれた。私とおなじの慶州崔である。それを聞いて頭を床に着けて拝礼をした。しかし世代(輩列)では彼女の方が私より上であると解り大笑い。韓国でよくあるハプニングである。伝統は続く。
韓国は漢字文化圏から抜けていくようである。しかし政治的に、文化的に中国向けが続く。韓国と日本は冷却時代。それでも韓国からの観光客の往来は激しい。学生たちは日本の旅行が楽しくてしょうがないと、崔由京は礼儀正しい人が多い日本が好き、住みたいといった。彼女の父親に私のハングルのエッセー集を献本した。
ワンアジア共同体講座の講義のお知らせ
今日は新年初めのワンアジア共同体講座の日。講義担当の諏訪春雄先生が転倒にて負傷されたとの連絡があり、急遽、総合討論の時間に変更することにする。昨年末の講義には講師から連絡がなく、代講まで考えていたが直前に教室に到着されて無事であったが、今日は本当に代講をせざるを得ない。受講生には申し訳ないと思う。前回講義で緊張緊迫の北朝鮮への講義を思い出して、「北朝鮮は“普通の国”である」という内容もあり、受講者の意見を聞きたい。また「民族と国家」という全体のテーマについても考えてみたい。矢内原忠雄は形式的な植民地と、実質的な植民地に区分した。つまりイデオロギーによって戦争とか植民地が行われる。そしてそれに伴い、人間の移動・移住などが行われると言うた。これは今でも通じる。日中関係、日韓関係が政治的に悪くても人の移動は激しくなっている。ただ北朝鮮はまだ「禁断の国」であり「楽園」と言っている。
北朝鮮を訪問
昨日のワンアジア共同体の講義は私からまず全体のまとめから始まった。日本の植民地と戦争、東アジアから東南アジアへ、そして南米大陸へのスペイン植民地に至る広く経済、思想、戦争などを検討したことを総評した。鵜澤教授は梅棹忠夫の文明生態論をもってグロバール的に植民地文化論を説明し、さらに前回の福原氏の「北朝鮮は普通の国」ということについてより議論すべきだとイントロを含め、議論を深めてくださった。そして私が2002,3年に3回北朝鮮を訪問して直接取った映像を見せながら当時の北朝鮮の実態に迫った。感想文を読んでみると、多くの受講生はメディアの報道とは異なり新鮮だとコメント。ただ一人の学生は宣伝映像に過ぎないと酷評をした。目下米朝の緊張、そして南北の宥和とはかけ離れたような現状である。
「北朝鮮は“普通の国”である」
韓国からエアメールの年賀状が17日間もかかって届いた。日本か、韓国の郵政事情のよるものだろうが、異様な感がする。日本は郵政改革をしたがそれほどサーヴィスが変わったとは思えないが、韓国に送った拙著が着いていない。以前中国に送った4か所にも拙著が届いていなかった。アマゾンなど当日配達もある時代には異様な事情である。先日ある講師の講義中の話で「北朝鮮は“普通の国”である」といい、違和感を感じている人がいることを知った。戦前の日本帝国、多くの王朝国、現在の多くの独裁政権の国家は「普通の国ではない」と思われるかもしれない。しかし存在する、存在したことを認めざるを得ない。北朝鮮はミサイルと粛清独裁の怖い国、禁断の国、脱北者が多い国であり異様な「普通の国ではない」と思っている人は多い。しかしその内部にいる人、外からに情報が入ることなく、そこで生活をしている人にとっては「普通の国」であろう。
メディア戦略
山口新聞に報道
拙著『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』(ハート出版)がこの地域の新聞では初めて、山口新聞に報道された。嬉しい。取材を受けた時の場面を思い浮かべた。早朝手にしても、どう評価されたのかを含み、いろいろな思いが重なり読むまで1時間も掛った。家内に音読してもらった。
「日韓の間で不和の火種になっている」と、懸念している人は多い。記事はこの「不和の火種」にどのような態度をとるかを注視していた。多くの人は私の客観的主張を評価してくれる。しかし「見方によって味方」になりがちである。客観性が勝手に「味方」に利用されたりしないか懸念する。べテラン記者の記事に感謝する。
「山口から考える中東・イスラム」高校生プロジェクト
私の研究室は7階、エレベーターが故障している。昨日私は先に山登りでもする気持ちで途中3回休んで上って、80代の二人の友人を待っていた。二人は青年時代のロッククライミングでもしたような激しい息をしていた。先日太めの高校の教師である磯部賢治氏がやはり階段を走って上ってきてはずませながら『地域から考える世界史』(勉誠出版)を献本してくれた。氏は「山口から考える中東・イスラム:高校生プロジェクト」を執筆している。一読した。テロや殺害などの報道だけで知っている「イスラムは怖い」という断片知識から広げていく教育プログラム、それ自体が素晴らしい研究であることを感じた。一般、特にメディアは事件や珍しいことがらを中心にしているが、それを契機に知識を広げていけるのは教育と研究であろう。国際化のために重要なプロジェクトが述べられている。彼の研究教育の現場に行って見たいと思った。
葉書に書かれた読者からのメッセージ
ハート出版から第4刷の本と読者からのメッセージが書かれた17枚の葉書が送られてきた。ほぼ全国からである。主に新聞広告から情報を得て書店での購入が多く、中には私に会ったことがあるという人もおられる。また『おばあちゃんの回想録 木槿の国の学校―日本統治下の朝鮮の小学校教師として』の編者の上野 幹久氏のものもある。「資料(日記)を公平な立場で客観的に分析されており、慰安所の本当の姿が浮き彫りになっています。多くの政治化に読んで欲しいと思います。論理的に反論していく材料としての価値は大きいと思います。時節柄、この本をもっと広告して欲しいと思います」
肯定的な内容が多い。ネット上を含めて読者の意見を総合してみると政治や状況からの判断ではなく慰安所の自体を知りたいということである。特に著者である韓国出身の私に触れていないこと、つまり本の内容を中心に読んでいただいていることを知ることができた。桜井よしこ氏の貴重な書評でも私のことには触れていない。読者たちへ感謝と尊敬を表したい。
ワンアジア共同体の講義
私は数日間風邪、しかし家内の投薬と看護、私の安静によりようやくよくなり、教会に出たらマスクをした人がいる。外は晴れており温かいのに教会内は寒い。ある人は自分の風邪が移らないようにと言い握手も控えていた。風邪も接触感染であろうか。書店に寄ってみた。私の新著『慰安婦の真実』が店頭に平積みになっていて産経新聞の書評も傍に添えられていた。ベストセラーを2カ月、ロングセラーになれるか。2か紙の書評、1か誌のインタビュー記事、出版記念会などが続くだろう。
今日はワンアジア共同体の講義、講師は中国浙江工商大学教授の金俊氏である。彼は清末の中国の近代化への動きについて広島大学で博士号を取られた方である。その後、日中韓の三ヵ国で講義などをしている。今日は中国を語るという。県立広島大学の名誉教授の原田環氏がコメンテーター、議論が広がるだろう。注目したい。
*写真は「東洋経済日報」へ私の寄稿文
講座は100点満点
謎の大国、「中国とは何か」の講義は面白かった。統一と分断を繰り返しながら大きい国になっていく。そこには中心と周辺が注目された。周辺は常に解放され文化交流の地点であった。多くの国は中心に核がおかれた。国民国家になって国境を重要視し、国境紛争を起こしているが中国はそうではなかったことが理解できた。金俊氏は特に西に開かれ、シルクロードができて西洋文化を常に受け入れてきた。もう一つの視点は遊牧民族と農耕民族の調和であった。中国を大きく分けて北の遊牧民族、その以南の農耕民族、その境界線が万里の長城であるという。儒教文化などで朝鮮とベトナムは中国の一部のように思われた。ただ山脈と川が国境になっている。彼の研究の康有為などによる西洋化近代化の関心が生かされず共産主義社会主義に統一される大国になったのである。原田環氏は民族の多様性から国民国家あり、、つまり漢族中心の国家を作ってから多くの民族との葛藤をどう考えるべきか。私は西洋の多文化社会ではないと指摘し、金氏は西洋から見るのはいかがなものかなどの議論があり、研究室でさらに長く議論は続いた。鵜澤教授から奨学生名簿が発表され拍手があった。最優秀者の李スンアン君は講座は100点満点と評価した。
平昌
アルコール
同じマンションの隣人に寄っていただいた。彼は下関生まれの典型的な地元の方である。彼の家は西向き、海と市内を眺めるが我が家は東向き、関門大橋と火の山を眺める海岸の景色に慣れている。彼夫婦は韓国旅行が好き、釜山だけ二十数回もいっている、奥さんは韓国語を勉強している。ビールで歓迎の乾杯。私はコップの5分の1ほどしか飲めない。アルコールアレルギーがあり、最近より酷くなっている。愛酒家の味や楽しみを知らない「無味乾燥な人間」とされそうであるが麻薬などの快とは縁の遠い、安全な人間ともいえる。私は自ら社交性が弱いと後悔ぎみになっているが新潟県立看護大学の徐淑子氏の論文で「快の効果を得るために薬物やアルコール、タバコなどの物質を使用する」といい、むしろ「対人・社会面での機能が急速に損なわれていきます」という文で慰められる。酒の社会性と非社会性がある。味、快楽など両刀の効き目に注意すべきであろう。
「小山上等兵が撮った日中戦争」が受賞作に
下関でも零下、日本の大部分が凍っている。北海道で零下31度、私はサハリンで行った冬の調査を思い出す。しかし全地球が零下になっているわけではない。シドニーに住んでいる友人は真夏の暑さもに苦しみながら凌いでいるという。グロバールにいうと地球は熱を保っている。スキー場では山が噴火して死傷者が出ているというニュースもある。
留学生たちに最後に講義をまとめてレポートを書かせた。彼らを眺めながら私も講義をまとめて以下のように書いた。
講義感想
観光人類学(11名)では「何を見るか」から始まった。まず美しいものを見る。何が美しいか、それはどのようにして作られるかその過程はどうか。美は創造される。美意識、そしてイメージメイキング、そして観光化される。そこには文化財として指定する問題、その基準は何か。
次は歴史的のなものが観光化される。それは歴史的事実ファクトfactであるところから話を始めた。どんな史実が価値があるのか、価値判断が問われた。そして史実が伝わる、そこに教育、イデオロギー、国家観などが関わってくる。多くは歪まれる。3番目は「面白さ」であった。その根源は楽しさであろう。好奇心によって開発されていく。観光はただの経済産業ではない。人間社会の本質を表している。
私の提案、学生がノート、意見発表、総合ディスカション、まとめ、感想文を書くという講義が行われた。マイクを使って学生が意見を発表するようにし、読み書き聞き話すの機能を発揮させた。2018.1.25
昨日の読書会は出版記念会の準備会になった。藤中氏が呼びかけ人の代表として進めることとなった。その時権藤氏が東京で開かれたドキュメンタリー映画として出品した映画「小山上等兵が撮った日中戦争」が受賞作になったという話をしてくれた。皆が大喜び、新年は運が良いと笑った。その時私に巨金を寄付するというメールで戸惑っていることも話題になった。嘘であろうといいながらも嬉しい夢の話であった。
香水とジャガイモの格差
我が家の幸福の木の花が昨夜開花し、香りが充満した。家内の親友が来られ、花見と歆饗をした。「歆饗흠향」とは儒教祭祀の用語であり、一般的に通用しない言葉である。祖先が供物の香りを楽しむ会うといわれている。祖先(死者)は供物を食べたり味わうことはできないが香りだけは感ずるという。つまり死者と生者とのコミュニケーションは香りで可能であるということになる。道教、儒教、カソリックなど多くの宗教儀礼で焼香、焼き紙の煙、酒などが使われている。それについては拙著『韓国の祖先崇拝』に詳しく論じた。
匂いや香りをよく感ずるのは犬であることは周知である。犬だけではない。人間には香水文化がある。高級百貨店のイメージメーキングのメインホールには香水が展示されているのが常である。しかし以前訪ねた社会主義国家の百貨店ではそこにジャガイモなどがおかれていた。香水とジャガイモの格差は何であろう。生計指数、民度の差、経済の差、教養の差、文化の差であろう。
出版記念講演会
出版記念講演会のご案内
この度崔吉城教授著『慰安婦の真実』(ハート出版)が出版されましたので、出版を祝い、ささやかなパーティを行うことになりました。つきましてはぜひご参加くださいますようご案内申し上げます。
時:2018年2月24日(土)午後3-5時
場:シーモールパレス ルビー
会費:5000円(本代を含む)
*準備の都合上、参加の是非を㋁㏰まで返送いただければ幸いです。
呼びかけ人:櫛田宏冶 石本弘之 友松弘幸 権藤博志 秦穴拳壱 藤中和岳(751-0804下関市楠乃3-2-23藤中080-3052-3103)
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朴仙容氏のエッセーから
続けて拙著に関して書くのは恐縮であるが、新しい貴重なコメントを紹介したい。これは書評とは言えないが、拙著『慰安婦の真実』を持って朴仙容氏が書いたエッセーである。「在日ニューカマーが日本にしっかりと定着し、その発言が韓日に影響を及ぼしている」と初めに述べている。私が慰安婦の強制連行という主張は早計過ぎると主張したことに「嫌韓日本人は大喜び、反日勢には聞き捨てならない」と予想できるがそれほど反応がない。それについて朴氏は「時代は変わった」という。「どっちの味方だ!」つまり一般人の反日論や嫌韓論は通じないという。「韓日の相互理解に崔吉城氏の研究が欠かせなくなった」と結んだ。この本への反日派からの批判が予想されたが、そうではないことに彼は反日論も成熟しているかのように書いた。出版記念会で彼の論評に期待している。