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Channel: 崔吉城との対話
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『慰安婦の真実』についてインタビューを受けた

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 昨日は「海の日」の休日にも関わらず午後全国紙のある新聞に拙著『慰安婦の真実』についてインタビューを受けた。猛暑の中の暑い話であった。私は一方的に話はせず、楽しい対話の時間であった。慰安所日記は貴重な資料であるという話、親日とか反日がある現在の話ではない遥か以前の「大日本帝国」時代の話に戻って考えたいと強調した。新聞にはどう書かれるかはわからないが楽しみである。

 

 


誘惑する文化人類学

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 熱中症のニュースが騒ぐ猛暑の中,私は次作と講演に向けて準備中。昨日は前回お知らせのように明後日沖縄の名桜大学で開かれる「軍と性」という公開講座で私は「戦争と性」という題で基調講演をする。その準備に「暴力とその変貌」を読んだ。京都大学の田中雅一教授著『誘惑する文化人類学』に誘惑され数日読書、その中の暴力に関する章を精読した。暴力とは一般に否定的と思われるが実は秩序維持のための恒常的な暴力という肯定的な面がある。我々はそのような国家権力などの中で暮らしている。しかし文化人類学者はその研究を避ける傾向がある。非難されやすいからであり、また非難したくなる。中には身体に傷付ける文化、例えば夫の死に妻が自殺する社会がある。否、自殺ではなく社会が強制する文化が多い。その外の社会では相対主義といって傍観、あるいは観光するような今に至っているところもある。暴力と報復が繰り返されている。その問題点を豊富に指摘している。紹介したい。一読を勧める。

台風10号

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  韓国の歴史の中で暗黒期と言われる植民地朝鮮での生活はどうであったのか。私の記憶では原始時代のような印象しかない。昨日当時の映像を見た。『映像から見る植民地朝鮮』の執筆のためである。映像に映る朝鮮の生活は花見、喫茶、映画、ダンス、パーティーなど私の想像を超えた映像ばかりである。暗黒期とは何か。戦争への兵站基地としての供出などの運動があって、朝鮮民族が日の丸を持つ忠君皇民化は異様である。反日の根源は恨みである。それは報復を繰り返す。恨みは沈んでいる心理、文化であるが、投票などは革命的な力を持つ。昨日ようやく脱稿した。解放、万歳の気持ち、それでもまだ緊張の状態、『雀様が語る日本』を語る、対談の日程のお知らせも来ている。明日は沖縄へ、台風10号と出会うようである。

「以熱治熱」

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 昨日の読書会はオールメンバーの総合討議、猛暑のなかの「以熱治熱」となった。話題はさまざまであったが、植民地時代から住んでいる在日とは違って、ニューカマーの韓国人や中国人が注目された。福岡在住の田中、板井、北九州の朴、広島から山田、そして下関の古本、田辺、倉光、礒永の諸氏と私の9人で、熱く討議した。観光だけではなく、日本に住もうとする人が多いという話、日本の魅力とは何か。日本で活躍する人たちのサクセスストリーではない話。韓国や中国が国民を追い出す、放出する力、日本が受け皿のようになっている要因はなにか。経済成長中心、競争の激しさ、単線的な出世主義から複線的多様な幸福な日本社会で安全安心を求めて日本に住もうとする人たちにが脚光を浴びる。親日論ではない。人生論、国格論、田中氏の筆力による本の出版の出発である。山田寛人と朴仙容の両氏が拙著『朝鮮戦争から生まれた米軍慰安婦の真実』に関するコメントをフェースブックに投稿した内容の説明もあった。

名桜大学で講演

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  早朝家を出て、福岡空港の搭乗待合あいの所でトンコツラーメンを食べた。スタンド個人用の窓口式、注文から終わりまでアイディア商業、美味しくきれいに食べた。沖縄に着き、沖縄名物のソバ(うどん)を食べ、麺続きであった。台風10号の前兆で雨風の中名桜大学の李鎮栄教授の案内でG7会議所などを回って宿所に着き、許点淑教授に歓迎された。5時から講演が始まった。台風の近接情報が続く中100人弱の学生、教員、一般市民、記者、社会運動家など参加、大いに盛り上り熱気を感じた。日中の会話で疲れた喉で演壇に立った。40分は短か過ぎと思いながらも短くて良かった。話とPPTの画像を通して行った。終了後、学科の同僚であり、仲間たちとの対面一列同席、その向かい側に李、趙、許、幸子、私の韓国席、沖・韓の談話、夜の10時半になった。、嬉しく、楽しく、そして多少疲れた一日が無事に終わった。

パラダイス

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 10余年ぶりに李鎮栄氏宅で朝食、許氏母子と合わせての朝餐、主婦の名料理で話題は文化論のようであった。沖縄ではノンビリできるという。台風の残余で風と雨の交差をジグザグ走る。ハイビスカスとブーゲンビリアの赤とジャスミンの黄色の花、パパイヤ、シュロ、海と空のパラダイス、楽園、古宇利島には愛楽園もあった。家内が青春時代医療奉仕に来たところである。宿願の海洋博物館へ、台風で休館、名護の観光地島一周、Ocean Towerでは自動Cart乗り、海を眺めながらのランチの時、海洋博物館オープンの嬉しい情報である。直行。巨大な水族館で巨大なサメへのフィディングショー、イルカショーは感動的であった。観客は全員中国人や韓国人であるような印象、楽園疲れは二人の弟子との楽しい夕食で講演会の公的な日程が終了した。楽園旅行中に村墓にも寄った。極楽、天国がこのような園であろう。

福岡空港に落雷

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 名護のJA農協でマンゴ、ゴーヤ、まくわうり、角煮など買って急にカバンが膨らんだ。乗車のまま注文式のアメリカンフード食のA&Wでハンバーグとコーラを口にしながら空港へ、許点淑にさよならをして、飛行機内へ。降りる態勢に入る時、機長から福岡空港に落雷。福岡空港閉鎖のため、佐賀空港へ行くと短いアナウンスがあった。乗客の反響は全くない。そのまま降りてANAのバスで博多駅へ向かった。沖縄で雨、風、晴れと変化する気候とは違った田園風景の中、旅行は続いた。ただ沖縄の雑草、ジャングルから整頓された風景に変わった。下関に着いた時駅の構内が停電してエレベーターも使えず駅員が照らす電灯をたよりに歩き帰宅したのは夜の9時であった。ミミちゃんも花たちも元気であった。留守番をしてくれたまどかさんに感謝、長い旅であった。私は以前もこのようなことがあったがその体制、対備の航空会社、日本人の教養に驚く。これが先進国であろう、嬉しい。

「宮里キリストの教会」

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 沖縄名護の「宮里キリストの教会」には二度目の訪問、前回は観光のようであったが、今度は礼拝時間の前について礼拝、聖餐式にも参加した。牧師翁長良明先生は入院中、メッセージは「十戒」の上映になった。敬虔な礼拝、式順から聖公会のようである。許氏はその教会の信者、その私の指摘には否定的であった。全ての信者、牧会者が平等であるという。私が紹介された。私は信者の許点淑氏の恩師であり、私の恩師もクリスチャン、許氏は三代目のクリスチャン先生、その教会で皆様と聖餐を共に受けたことに感謝の言葉を述べた。許氏のインタビュー調査記録の「恨をかかえて:ハラボジの遺言」(2016)を読んだ。戦中「軍夫」として沖縄に労働動員された姜仁昌氏の証言録である。慰安所の経験も書かれている。巻頭に許氏は「実は、私の軍夫問題への関心の傾斜には恩師である崔吉城先生(東亜大学教授・広島大学名誉教授)の存在が大きい。先生の足元にも及ばない小さき者ではあるが、先生の急所を得るアドバイスと、送ってくださった書物の『恨ハン 朝鮮人軍夫の沖縄戦』(海野福寿・権丙卓著、河出書房社、1987)に奮いたたされたのである。ここに記して感謝とお礼を申し上げる」。学問が継承されていると嬉しく、イヌ好きも継承されていると知りビックリ。李鎮栄教授の学生たちの扱いや、犬や猫を愛する行動を彼らの家庭で実感し、自分の日常生活を見るような気持だった。生活面まで本当に「先生」(?)になったのかな。


박호원씨 별세

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 나와 번역 등 많은 저서 출판에 도움을 준 박호원씨가 세상을 떴다는 소식을 접하고 놀라고 비통함을 금할 수 없다. 그는 늘 겸손하고 신중하여 나의 좋은 협력자였다. <조선의 무격> 공동번역에 이어 아키바의 주저 두권을 이번 여름에 출판할 예정으로 마지막 원고를 가지고 방문해 오기로 기다리는 중이라 의외의 생긴 일이다. 아직 62세, 나보다는 아주 젊은 학자로서 앞길이 양양한 나이에 세상을 뜬 것이다.  삼가 명복을 빈다.  사진;오른 쪽 끝 박호원, 최, 홍종화, 이소나가2015년 시모노세키  私の翻訳など多くの著書出版に協力して下さったバクホウォンさんが亡くなったという知らせを聞いて驚いて悲痛を禁じえない。彼はいつも謙虚で慎重な人で私の良い協力者であった。『朝鮮の巫覡』の共同翻訳に続いて秋葉隆の主著の二冊もこの夏に出版する予定で、最終段階になり原稿を持って訪問して来るということで待つ中の意外な出来事である。まだ62歳、私より大部若く、前途洋々な年齢で世を去ったのだ。ご遠慮冥福を祈る。     


 

なぜ苦労するのか

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 台風10号に向かって沖縄に行ってきたが、今週末には12号に向かって京都国際日本文化センターへ行き、発表することになっている。熱中症で死者も多く出るこの頃、我が家では冷房をせず過ごす。それは海岸の高層ビルという立地条件だからである。感謝である。仕事もまあまあ順調にしている。読書会、講義、研究会、海外国際会、講演会等々が続いている。そんな中、友人の韓国大手病院の理事長を広島へ案内する日程も入れなければならない。花火も楽しみ、きつい日程を無事にこなせるよう祈る。私のいろいろな日程にいつも言ってくれる韓国の友人がいる。「なぜそんなに苦労するのか、楽に老後を暮らせよ」。*写真:沖縄名護G7記念館の台風対備

「花火、花美」

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 前回我が家は涼しく冷房をしていないと自慢のように書いたが昨日それが敗れた。冷房をして寝た。考えてみると大学でも家でも冷房の生活になった。本当に猛暑の夏である。ベランダの鉢物の棗が赤く染まっている。暑さによる「結実」である。テレビでは花火を生中継、本当の「花火、花美」である。美しい。音を主にする爆竹文化とは違う。我が家から観れる関門花火大会が爆竹のレベルを超えて美しくなるのだろうか、それを憂う。
 読書会では山田寛人氏の拙著への書評に注目して議論した。悲惨な被害の展示を観て逃避したくなるか、平和と愛へと繋がるのかに対して私の南京記念館を観覧した感想からの疑問である。記念館のメッセージが正しいのか、という私の問題提起に評者、読者たちがどう考えるのだろうか。

私が勉強した講義

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 昨日は前期の最後の授業だった。アジア文化言語では戦争と植民地、全部私が調査に歩いたことの話と映像によって進行した。通って学生のレポートには戦争は決してスポーツではない。ベトナムは戦争が多かった。日本も戦争の問題が多い。戦争の後遺症は大きい。朝鮮半島の南北関係、北朝鮮へ関心が高いとも書かれている。日本文化論では外国人が見た日本文化を論じた。ベネディクトの「恥文化」、ボーゲルの「ジャパンアズN0.1」などを以て語り討議した。衣食住から花、浮世絵とアニメーションまで展開した。アジア言語文化と日本文化論の、二クラスそれぞれ20数名、授業感想文に日本に来る前と後、授業によって考え方がどう変わったかが分かる。一番反日的だと思った韓国の学生より中国の学生たちが反日的であり、授業の影響も少ない。ベトナムとネパールの学生は日本に好印象が強い。日本人の親切、やさしい、ルール守り、真面目、町が奇麗など指摘する。しかし生活やアルバイトなどを通して建前と本音、こころのないあいさつ、否定的な面も指摘される。ゴミ分類、車が通ってないのに信号を守る真面目さに戸惑う。花屋がベトナムより少ない日本など異文化論が始まる。私が勉強した講義であった。

 

国際日本文化研究センター

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 京都駅で大連の林楽青氏と合流、昼食後、タクシーで国際日本文化研究センターへ、運転手が道を知らずナビ頼りで料金がいつもより1500円以上高く、時間もかかり、ぎりぎり始まる直前に到着。台風のニュースが気になり次の日の日程はキャンセルになった。そんな中、私の『慰安婦の真実』の発表と討論は予定通りに行われた。書評もしていただいた堀まどか氏も参加し生のコメント、他の方から妓生と慰安婦の関係などの議論、私にとっても有益であった。若い研究者へのメッセージとし右翼か左翼かという、非難を気にせず、恐れず、積極的に学問の真髄を追求する態度をとるべきだと選挙演説風になって笑わせた。帰りは夜10時過ぎ、疲れてしまった。台風も体も異常ない朝の海峡の海には漁船が悠々としている平和な風景。*写真:林氏提供    

//conferee64.rssing.com/chan-53560937/article1074-live.html

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 새로 부임한 목사가 <내일이면 늦으리>라는 좋은 설교를 하였다. 2년여 오래 동안 무복시대를 거쳐 한국인 목사를 맞았다. 감사한 일이다. 교회에는 나의 오랜 연상의 친구의 친족인 구자동 장로가 있다. 그는 나의 연구를 읽고 평을 해주는 유일한 인테리 신자이다. 어제 우리 둘은 회당 안에 서서 긴긴 이야기를 나누었다. 그와 딸은 한국인들이 식민지를 일방적으로 비난하는 것과는 달리 세계의 여러 식민지와 비교하여 쓴 나의 글을 읽고 있다는 말을 하였다. 나의 어떤 글인지 모르지만 지금 그런 내용의 책을 준비중인데 나오는대로 그에게 기증하고 싶다. 정말로 많은 사람에게 기증하고 싶은 마음으로 책을 내고 싶다.   

 新しく赴任した牧師が「明日では遅い」という良い説教をした。2年弱の間の、無牧の時期を経て、韓国人牧師を迎えた。感謝している。教会には、私の留学生時代の友人の親族である具慈東長老がいる。彼は私の研究書を読んで評価をしてくれる唯一のインテリ信者である。昨日、私たち二人は長い話を交わした。彼は韓国人たちが日本植民地を一方的に非難するのに違和感をもっているという。世界の多くの植民地と比較して書いた私の文章を読んだコメントであった。彼は娘の意見も同様であると言った。私のどの文なのか分からないが、今そのような内容の本を準備中なので出たらまず彼に寄贈したい。本当に多くの人に寄贈したい気持ちで本を出したい。

拙著が紹介されている

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 今朝のラジオ深夜便で作家石田 衣良氏の「母を語る」を聞いて感動した。恋愛小説の第一人者から母への思い、母が死体ばかり目にしても隅田川で泳ぎ、シラサギが泳ぐよう姿を見、悲惨ばかりではなかったことを語った。私の戦争体験を語ってくれるような実感があった。映画『娼年』など性を主題にした官能的な小説、人間の欲望と「娼婦」ならぬ「娼夫」という、ほぼ全編がセックスシーンを今の私の年齢でどう読むか、罰される覚悟でもみたい、読みたい。私の戦争体験の体験談を中心に書いた最新拙著『朝鮮戦争から生まれた米軍慰安婦の真実』を掘り下げて人間たちについて書きたくなった。10年以上連載している「東洋経済日報」に拙著が紹介されている(写真2018.7.27)。

 著者は1940年、韓半島の38度線近くの南側にある小さな村で生まれ、10歳ころに朝鮮戦争の悲惨な状況を体験した。そこでは国連軍兵士による性暴行があり、それを防ぐために売春婦たちが村にやってきた。彼女たちは、いわば韓国の米軍慰安婦である。
 著者はを自身の戦争体験をもとに、貧困と性暴力が交差した朝鮮半島の戦後史を語りたいと自伝的スタイルで著した。
  

昨日は家内と私がスマートフォンを購入した。私は最新型へ、家内のものは携帯からスマートフォンへとなった。家内は値段と使いこなせるかという負担で躊躇していたが私の本の校正など大きく協力したということで私の受賞記念にするということで決断したようである。

 
 


Love is a Many Splendored Thing

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 時間を守るわけではないが4時台のラジオ深夜便を聞いて5時に起きる。今朝は柳美里の仲間たちの話を聞いた。今朝は涼しい風、八月一日秋風を感ずる。気候が変と思われるかもしれないがそれが自然の「自然さ」である。すぐ机で作業が始まる。ぶら下がり運動、足ふみ運動も日中に行う。健康のための運動とは思えない。ただ長い間にできた習慣に過ぎない。何かを書き、読みを続ける。日本語と韓国語で執筆する。業務ではない仕事をする。留学生たちは日本ではルールが厳しい、時間を守るのが異様だという。私は外国出身者と思われているが日本人になったのか。
 昨日は古い映画「慕情」を英語の勉強を兼ねて視聴した。舞台は1949年香港、ユーロアジアンの女性の不倫の恋愛、複雑な問題、噂を仕切って展開するラブストリー。見下す香港市街が懐かしい。朝鮮戦争に出征、戦死、思い出のデートの場所の木の下で彼女は泣き崩れる。悲しさ、泣くことを『哭きの文化人類学』の著者として細かく観察した。ハッピーエンディングばかりの韓ドラとは異なるアンハッピーエンディング映画、シェイクスピアの悲劇の文学を感じた。良かった。Love is a Many Splendored Thing

伊東順子氏の書評

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伊東順子 崔吉城著『米軍慰安婦の真実』を読んで

崔吉城先生のテーマは、いつも興味のストライクゾーンに入ってくる。先に書かれた『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』もそうだったし、植民地における宗主国の建築物に関する比較研究もそうだ。オリジナリティのあるテーマが、独自の調査と思考で論じられていく。韓国関係の本はいささか食傷気味でもあるけど、崔先生は特別だ。いつも最優先で読み、そして考える。

この本も何度も読んで、ずっと考えている。

少年が見た米軍慰安婦の村
生まれた村が米軍慰安婦の村になった物語は、著者の幼少期の体験から始まる。好奇心旺盛な少年が新しいもの、珍しいものを、積極的に観察し記憶する。著者は幼い頃の自分に問いかけ(インタビューし)、記憶(証言)の裏付けをとっていく。一流の文化人類学者が自分自身を取材対象にして物語を再構築していく、この本の前半分は掛け値なしに面白い。
特に日本の敗戦から解放、朝鮮戦争の部分は、私自身が昨年インタビューし、まとめた「北朝鮮出身の元NATO軍軍医、ドクター・チェ」(『中くらいの友だち』第3号)とも背景を同じくする。38度線と軍事境界線は違うのだという確認は、奇しくも私自身も強調した部分である。
さらに、この物語は私の母の物語にも通じる。私の母も80歳を前に自分の記憶を一冊の小冊子にまとめたが、それは自分の生まれた街が「遊郭」になった話だった。軍の連隊が置かれて軍都となると同時に、市の一角には遊郭が、計画的に作られた。母は幼い目で見た遊郭の様子を、70年後に文章にした。日本の遊郭で暮らす少女もまた、朝鮮の慰安婦の村の少年と同じぐらいの好奇心で、街と世の中の変化を眺めていたのである。
前半はあっという間に面白く読んだのだが、後半では疑問がいろいろ出てきた。大きくは以下の2つだ・
1, 韓国人の民族感情に、対日と対米で大きな差があるのか
2, 韓国人と日本人の貞操観念の違いは、近代化の速度の差によるのか。あるいは文化的にまったく異なる素地があるのか。

1, 韓国人の民族感情に、対日と対米で大きな差があるのか
7月半ば、愛知大学のオープンキャンパスで担当している「現代韓国事情」の最終回、崔吉城先生の新刊『米軍慰安婦の真実』を紹介しながら、「米軍基地村での性売買”慰安婦”に損害賠償」問題をとりあげた。「米軍慰安婦」については今年2月、韓国の国家責任を認める判決が出ている。http://japan.hani.co.kr/arti/politics/29733.html 
「日本以外の国にも『慰安婦問題』があったなんで、私はいままで知りませんでした。大変、ショックです。なぜ、知らなかったのでしょう」
女性受講者が何度も驚きを訴えた。すると、男性受講者が「それは、マスコミが偏向しているからです」と決まり文句。それに対して、「偏向というより、視聴者が関心がないことは報道しないだけでしょう。日本軍慰安婦問題は日本に関係があるけれど、米軍慰安婦問題は直接関係ないから」と、常識的な意見が出る。
ただ、「米軍慰安婦」は韓国でも長い間、大きな問題とされずにきた。日本メディアの偏向云々についてはともかく、韓国国内の問題に関しては、私が説明する必要がある。
崔吉城先生は『米軍慰安婦の真実』の中で、「対日」と「対米」のダブルスタンダードを指摘されるが、私はそこがうまく理解できない。韓国人は日本に対しては厳しく、米国に対しては甘いということがあるのだろうか?
私自身が暮らした1990年代~2000年代の韓国は、反米運動がとても盛んだった。それを洋泉社新書の2冊の著書にも書いた。たとえば光化門の米国牛肉輸入反対デモに2万人、ところが同じ時期の日本大使館前の慰安婦関連集会には200人というのが、日常的な風景だった。韓国人のナショナリズムは「敵」が明確な「対抗ナショナリズム」という印象が強いが、その「敵」は状況によって相手を変えるように見える。時には「反日」、時には「反米」、また「反中国」を強く感じる時もある。それは時の政府の、政治外交上の事情が深く関係しているように思う。
「慰安婦」問題についても、民族的な感情というより、政治的な便宜主義(政治外交のカード)を強く感じる。しかし、崔先生は、国連軍の性的暴行や米軍慰安婦がこれまで語られてこなかったことを問題にする。
「ここで、どうしても私に、一つの疑問がわいてくる。なぜ、明らかな犯罪である国連軍の性暴力、つまり米兵が朝鮮戦争の時にひどい性暴行をしたということは、彼らにとっての問題にならないのか。なぜ、韓国の人たちは、このことを取り上げようとしないのか」(p179)
「韓国の人たち」というのは、政府と国民の両方を指すのだろうか? 
ただ、日本軍の従軍慰安婦についても、韓国政府が真剣に取り組むようになったのも2000年代に入ってからだ。1990年代以前には政治交渉に持ち出されることも、国民的な運動が起こることもなかった。
さらに、私が疑問に思ったのは、次の部分だ。
「性の問題に関して、フェミニズムとナショナリズムは、常に緊張関係にあったが、敵対(?)する日本に対するものとは対照的には、アメリカに対しては非常に寛容だった」「つまり、米軍相手の売春は比較的自由であり、法律的な制約はあまりなかった」(P180)
少なくとも、朴正煕大統領時代のことを考えるなら、「日本に対するものとは対照的」というのはあたらない気がする。 崔先生も本書の中で言及されているように、日本人観光客相手の売春も特別な許可証を与えられ、かなり自由に行われていたからだ。 そして一般国民はといえば、米軍相手の「ヤンカルボ」も、日本人相手の「キーセン」も、同じように差別し、蔑んでいた。

2,韓国人と日本人の貞操観念の違いは、近代化の速度の差によるのか。あるいは文化的にまったく異なる素地があるのか
p190から始まる「韓国人の貞操観念」という章は、大変、面白い。たとえば、「韓国人は性を抑制するために、禁欲するのではなく、謹慎する」(p191)
ここまで、儒教における性を、キリスト教や仏教などと比較して、上手に表した言葉はないのではないか。儒教は謹慎を強いる、それは女性にのみ厳格で、男性には寛容というダブルスタンダードである。性を謹慎するとは、――つまり女性においてのみ、夫に出会うまでは謹慎期間が続く。そして結婚後は夫以外との性は、たとえ夫と死別しても、「永遠の謹慎状態」となる。
ところで、その後に登場する日本人と韓国人の貞操観念の違いについては、少々理解にしにくい。たとえば「冬のソナタ」が例にあがっているが、確かにここに出てくる貞操観念は日本では1960年代までの意識にように感じる。つまり、先生が指摘されるように、日韓で、特に女性自身の貞操意識に「時差」があるのはわかるのだが、それは単に近代化の速度の差なのか、儒教や韓国文化に根ざした意識のせいなのかが、うまく読み取れない。
それはおそらく両方だと思う。
この後半部分については、ぜひ2000年代以降の韓国の変化が書き加えられるべきだと思う。
本書には1995年代半ばの大学生の性に関する意識調査の結果が例として引用されている。私はその頃、梨花女子大の学生たちと同じ下宿で暮らしていいたので、この部分はリアルに理解できる。たとえば、同じ下宿にいた女学生が強姦されたことがあったが、彼女を慰める言葉が「処女膜再生手術があるから、そんなに落ち込まなくていい」という言葉であり、実際に彼女はすぐに手術を受けた。あるいは、日本の女子高生は自転車で学校に通うと言ったら、「そんなことをしたら処女膜が破れるじゃないか」と言われた。
ただ、その後に韓国女性の変化した。2000年代に入ってから、「戸主制の廃止」、「同姓同本の結婚の許容」、「姦通罪の廃止」など、女性に関する法律が矢継ぎ早に改定された。また新生児の男女比率も解消され、今はむしろ「娘がほしい」という声を現実社会ではよく聞くようになった。また、処女膜再生手術よりも、出産後の膣を締める手術が話題になったりもした。そして、昨今のMeToo運動にいたるまで、韓国の女性たちの意識は大きく変化している。
それは表面的なものなのだろうか?
崔吉城先生の著作はいつも刺激的だ。とりあえず、ここまで書いておいて、あとはもうちょっと考えようと思う。

熱帯地獄

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 私は連日出かけず部屋にいる。台風の残りの影響か、風が強く窓やドアーを開けで調節する。日本列島が猛暑、100人近く死亡している。曼荼羅の火の地獄図を思い出す。チベットの曼荼羅では寒地獄であることに異様さを感じた。昨日珍しい暑中見舞いをいただいた。曼荼羅の絵解きのようなもの、私の日本語や漫画読みの力では難しく家内の協力を得ての楽しい時間であった。カラオケで暑さに北国をダジャレで歌う避暑方法は私には縁遠い。西洋にはバカンス文化がある。猛暑には都市がカラカラになる。私は若い時、他人のバカンスには、人が遊ぶとき私は勉強してプロになるというような否定的な考え方をしていた。しかし今は変わった。プラス思考で考えるようになった。遅すぎて高齢者になってしまったが。室内では机の向きを変えて避暑をしている。

インタービューと伊東順子氏の書評

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 百貨店に行き、くまざわ書店にも寄った。私の寄稿文の入った雑誌『歴史通』、新刊拙著『米軍慰安婦の真実』と『慰安婦の真実』が20冊ほども店頭などに平積みになっている。私がここに住み、大学、在職中であるので本屋の配慮であろう。感謝である。しかしこの地域の新聞などのメディアは一切触れていない。本欄読者も下関の人が一番多いと思うが、なぜメディアは関心がないのか。もし右、左を意識しているのであれば、メディアの姿勢は間違っていると思う。その中に全国的評論紙である「日本時事評論」(2018.8.3)に田村伸氏の私へのインタビュー記事が2面全面開きに記載されている。私の研究からの見解が詳しく語られている。また昨日本欄に紹介されている伊東順子氏の書評が寄せられている。本格的な書評に心から感謝、感激である。本を読んでいない人たちのうわさ話とは異なる。昨日の読書会では慰安婦に関して韓国のダブルスタンダードつまり反日と反米への異なる態度、韓国の貞操観について議論した。

20数年ぶりのハノイ

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 福岡からベトナムのハノイへ一気に飛んだ。空港では財団案内の学生たちに迎えられ大型シャトルバスでコンベンション会場のロッテホテルに向かった。20数年ぶりの訪問である。会場へには少し遅れたが歓迎の民俗舞踊の観覧、そしてサプライズ、元アメリカ副大統領候補のアル・ゴア氏の講演を聞いた。地球温暖化について悲観的と楽観的な二つの見方があると言う話、分かりやすい英語、説得力あるパーワーポイントに感動した。地球全体が暑くなり、洪水、旱魃などで多くの人が死んでいく。楽観的な見方とは前者の意見へ反対するとか逆論ではなく、対策の在り方を提示した。私は両面の見解を提示し、どちらを選ぶかというレトリックと思ったが否定的な現象から対策への政策論であり、やはりアメリカの大統領のにふさわしい発想であると思った。政治家のスピーチの上手さに感動した。続いて「未来への希望」というセッションが行われた。東大の田中節三教授の話には鱗が落ちる。寒帯地域でもバナナが栽培できるという研究発表であった。早速挨拶を交わして著書をいただいた。世界から集まった650余名の学者に旅費、滞在などを提供し、研究発表、文化交流、ネットワーク構築へ寄与するワンアジア財団の佐藤洋治理事長に感謝である。私は韓国や日本などで活躍する弟子、後輩に会った。ベトナムの伝統音楽の中で豪華な食事、わが夫婦は日本での受賞の時の、豪華な帝国ホテルに続き幸せな時である。今日は学術発表会などに参席、明日の深夜便で帰国する。

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