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Channel: 崔吉城との対話
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「愛の不時着」

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PC終了の時「強制終了」で数日に書いた原稿が見つからない。長く工夫しても復元できない。韓国の友人から拙著への厳しい書評、「反日になってみて」という。ギブアップの一日であった。韓国ドラマ「愛の不時着」の寄稿の新聞コラムが届いた。そのドラマよりも劇変する南北関係に呆れた。文大統領が朝鮮戦争記念式で北へ隣人愛を語り、終に日本が朝鮮戦争から経済復興したと一句、トランプが手にした聖書、コーランのジハードから自爆などこの世は無知が横行している。

                                                      ドラマ「愛の不時着」

「愛の不時着」。3日間、集中して鑑賞した。ドラマより急変する劇的な韓国、NHK朝の番組で漫画家、東村アキコ氏は「韓国は面白い」「韓国ドラマは面白い」「韓国が好き」だと言っておられた。韓国のドラマの面白さの根源はその社会、政治状況そのものからであろう。38度線、休戦線、軍事境界線から悲劇と緊張のJSA、トンネル等々、板門店旅行が盛んに行われたが今では薄れていく。しかしポイントは変わる。死線ともいわれた軍事境界線、DMZの緊張感、天然動物保存云々、風船も風に乗って飛んで行く。
 ある日、突風によるパラグライダーの事故で、北朝鮮に不時着した財閥の娘、彼女を隠して守るうちに愛するようになる北朝鮮の中隊長李大尉の絶対極秘ラブストーリー。彼は身体的に強い、ハンサム、心優しく相手に心配りをする。ピアノ、美しいスイスの景観など「冬のソナタ」に似た構造、その続編のようである。ただより広く、複雑、舞台は南北韓、中国、スイスの国際舞台が広がる。
 パラグライダーで竜巻に会って気が付いたら越北していた女性、北朝鮮での生活は囚われの身であり、敵対しながらも頼らざるを得ない。身分を隠しながら北朝鮮の素朴な人々との交わる生活ぶりが描かれる。
 ドラマは進む。脱北者が混在するソウルへ、喜劇と悲劇の繰り返し。脱北などによる往来や交流が多い韓国、南北の政治問題が絡む。銃殺事件などを経て生き残る。南北のそれぞれの人々から協力が得られ、お互いの無事を確認しての南北への離別。数年後スイスで音楽と美景の中での再会、冬ソナより国際化、濃い愛の物語りである。ハッピーエンディング。
ドラマでは朝鮮半島が一つの舞台として、既に統一されたような気分になる。南北往来の希望の実現化も夢ではない。ゴム風船による軍事対決への現実の緊張もドラマが十分表現している。このドラマはルポライターやノンフィクションで見ても良い。南北の生活が似て異なる
「ドラマ」では(方言?)韓国語と朝鮮語が混用している。文法などが根本的に異なるわけではなく、主にアクセントとボキャブラリーが異なる。言葉だけでは南北の差がそれほど表れず北朝鮮の乞食と韓国のジーパン服(乞食式流行)が比喩的に経済格差、否、笑いを誘う。貧富の格差には聞こえず、ただ面白い。脚本、演技、プロデューシングなど素晴らしい。
韓国の財閥の頭首の宮殿のような豪華さ、父が王座のような椅子、会長らの出入りにヤクザ式行列などの権威主義、北朝鮮の暴力的権力構造の独裁。南の競争主義エリート出世主義、北の血統人脈主義が対照的である。いずれも競争の激しい朝鮮半島社会の共通点が明らかになっている。
20年ほど前に3回も観てきた北朝鮮の情景から私には、現実とドラマが交差混同して映ってくる。男性主人公はなかなか泣かない。終盤で彼は大きく泣きくずれる。我慢した私もそうであった。耳に地滑りのような悲痛な感動が湧いてきた。


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