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Channel: 崔吉城との対話
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日本人のハングル読者

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 最近は仕事が多く、連休などの休日が嫌になる。私のメイン情報欄であるホームページが消えておりご迷惑をかけている。15年ほど前、自作したものを何度も修正して発信したが今不能になっている。昨日自力で必死に回復させようとしたが無理、業者に任せることとなった。復帰まで費用と数日がかかるという。しかし私は複数のチャンネルを持って発信している。東アジア文化研究所と東亜大学のホームページ以外にもブログ、フェイスブック、ツイッター、新聞コラム、著書など。何より口コミ、会話が楽しい。研究会、講演会、公開講座、講義…。
 本欄の文が長いというご意見をいただいて短くしようとしているが、書きたいトピックが多く困っている。寄贈した韓国語の拙著へ日本人のコメントが嬉しい。山田寛人氏の第二のコメントがFBに書かれている。

최길성"식민지 역사 바로보기"민속원, 2016(崔吉城『植民地の歴史をまっすぐに見る』)を読む。第1部第3章「被害意識」を読み、「事実」と「評価」のちがいについて新たな視点を得た。

この章の冒頭で取り上げられている、ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ『竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記』(ハート出版、2013年)は未読だが、「終戦前後の朝鮮半島と日本で、日本人引き揚げ者が味わった壮絶な体験を赤裸々に綴る、息もつかせぬ、愛と涙のサバイバルストーリー」という紹介文がある。

この本の中には日本人引揚者が朝鮮人から筆舌に尽くしがたい暴行を受けた場面が出てくる。それに対して、朝鮮人側からは猛烈な反発があったという。加害者であるはずの日本人が、被害者であるはずの朝鮮人から、そんなことをされるはずがないというわけだ。広島の平和記念資料館に対する朝鮮人の反発も、それと根は同じだ。加害者であるべき日本人が被害者であってはいけないのである。

〈事実〉と〈評価〉は分けられないところもあるが、それでもやはりきちんと分けて考えないと、こういうとんでもない話になってしまう。もちろん、被害という事実が生じれば、誰にどれだけの責任があるのかを問うために評価をする必要はある。しかし、責任を問う前に、被害は被害として目をそらさずに見つめるべきだろう。

〈事実〉は過去に起きたことであり変えられないが、〈評価〉は未来を変えていくための原動力となる。だから、人は〈評価〉に血眼になる。自分が望む〈評価〉をつくり出したくなる。しかし、事実は事実、被害は被害として認めたうえで、より良い未来をつくるための〈評価〉に進んでいかなければいけない。

著者は、敗戦という事実を認めようとしない日本人について「敗戦は悲惨なものではあるが、「敗戦精神」から社会を根本的に変えていくこともできる」(89)と述べる。事実を事実として認めるのは当然の大前提であって、そのうえで、どのように評価をして、どのように社会を変えていくのかが問われるのである。

著者は、事実を事実として認めない態度に対しては、それが日本人であろうと朝鮮人であろうと、手厳しい。一方、広島の平和資料館と、韓国の独立記念館・中国の南京大虐殺記念館を比較することで〈評価〉の問題も扱っている。どちらも被害の事実を伝える博物館だが、前者は核廃絶という人類全体の平和を目指す方向性があり、後者は加害者に対する憎しみを助長する方向性がある。

どちらの〈評価〉が良いというものでもない。「展示資料が事実だとしても、資料の選定などを通して事実の変造あるいは創造が生じ得る」(89)。つまり、その博物館が、どのような未来を目指しているのかが、〈事実〉を示す展示にあらわれるのである。さらには、そうやって作り出された展示をどのように見るのかも問われることになる。

著者を〈左〉か〈右〉かというように二項対立的に捉えようとする読者は、この本を読むと頭が混乱することになるだろう。しかし、事実は事実として認めたうえで、どのように評価していくべきかというふうに考えることのできる読者は、得るところが大きいだろう。

 山田氏の書評で、これからは韓国語そのままで日本人の読者を持つことのできる時代を予兆する。日本には韓国語を知っている人が多いから。以前ソウルで韓国語で出した本が日本語訳になって韓国より日本でより多くの読者に出会ったことを考えている。韓国語の『한국인의 한(韓国人の恨)』は真鍋祐子氏によって多くの読者に出会うこととなった。

*写真:植民地朝鮮における朝鮮語奨励政策―朝鮮語を学んだ日本人

植民地下の朝鮮で、日本人を対象としたさまざまな朝鮮語試験が行われていた。 朝鮮総督府による、教師や警察官などを対象とした朝鮮語奨励政策の実態を、幅広い資料群の分析を通して考察した書。
推薦:崔吉城(元広島大学教授)
山田寛人著
■A5判・上製・268頁
■ 定価4,800円+税
■ISBN978-4-8350-4155-1
■ ’04年6月刊


 

 

 

 


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